2015-01-01から1年間の記事一覧
それは彼女にとって悪夢のような一日だった。突然の、黒服の男達の乱入。数十名の黒服達が巫女の神殿に押し入ってきた時には最初は何事かと思ったが彼らが身に着けている紋章を見て、パラミティースは思わず顔を強張らせた。 ラーゼンクロー、ラーズ教団でも…
華美な装飾品も最早要らない、 着飾るためのドレスも要らない…あるのは、父の仇を討つ覚悟と祖国リアナの復興を願う心だ。アイギナは、だが女としてある一人の男性にどうしようも無く惹かれている自分を自覚していた。恋等、今の自分には不要の物である事は…
「ムリン、ダンファー。良く来てくれました。」 女性特有の柔らかな声の響きでもってアルヴィナは2人を執務室へと迎え入れた。ここはルーアン城の一室、窓から一望出来る景色は城の周囲を取り囲む高い崖と小さいが美しい城下町。窓の景色を見ていたアルヴィ…
「クラウディア、今戻った………!?」 自宅のドアを開けて、騎士ハロルドは妻にそう告げようとして絶句していた。目の前には…アーサーが居た。 どうして、ここに…!?それは、アーサーとても同じ思いだったのだろう。アーサーも、驚愕したようにこちらを信じら…
「あの男は私のよ、私が殺すの!」 ケイは、シェルパの方を見て叫んだ。だが、無残にもシェルパは大勢の帝国兵達に拘束され身動き出来ずに居た。 「我らがまず、この傭兵を尋問する。その後もし生きていればお前にくれてやっても構わん。」 帝国兵兵団の団長…
寒い、ひもじい、体が動かない…ここはとある田舎街の道路脇、親に捨てられた一人の子供がひっそりと体を横たえぶるぶると震えていた。その瞳には希望がなかった。随分と前から何も食べていない…虚ろな瞳で通り過ぎる馬車を見る。 「止めてください。」 ふと…
ギィ、と修道院のドアが開く。 入ってきたのは、裕福そうな商人風貌。 銀糸を縫い込んだ、チョッキに赤いガウンと派手な出で立ちで ブーツの音を響かせて入ってくる。 修道院の中で遊んでいた子供たちは そちらの方を見ると そそくさと奥へと引っ込んだ。 人…
時刻は夕刻…何時もなら大地の下へと太陽が沈む頃合。今は冷たい糸のような雨が細々と降っている。国境を警備していたガードナイトの青年マーセルは、ゆっくりと視線を前方に向けた。ふと、その目が険しく細められる。遥か前方に黒い、無数の人影を認めたから…
ドラゴンの背中に乗り空を駆ける為には まず風を読まなくてはならぬ。 今日は、帝国の大草原の空中で竜騎士達による模擬試合が行われていた。ルールは一対一での決闘だ。 東の空域には小柄なドラゴンに乗り青い髪を風に吹かれるままに流し、実直そうな 瞳で…
ラーズ司祭フェルマーは、 薄暗い洞窟の中で熱心に祈りを捧げていた。この狭い場所で、他にも十数名もの ならず者風貌が揃いも揃って頭を垂れている。頬に傷持つ者。体に刺青をしている大柄な男等で構成された彼らはデミアス山賊団と呼ばれ界隈の人から恐れ…
「だから、ソフィーは…!」 「お前には…無い事だ。」 「でも…!……!」 「……!黙れ!それ以上…」 ここは、ラーズ帝国の名門貴族ハルス家の豪邸の一室。 中から男と女の激しい口論が聞こえる。 男はハルス家の当主にして豪弓パスカニオンの開発を指揮している…