徒然の都

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ファイアーエムブレムif 二次創作小説・暗夜王国編

ファイアーエムブレムif 二次創作小説・暗夜王国

『第9章・再びの試練Another』Part1.

 

氷の部族の住む土地の平定を辛くも達成した、女カムイ達一行。
暗夜王国の王城
『クラーケンシュタイン』へと報告の為に戻り、その功績として再び
実の子と認めると言う
ガロン王の言葉に喜んだのも束の間の事。
次は、ノートルディア公国に赴き白夜王国の勢力を駆逐せよ、
との命令を受けた。

 

束の間しか休息をする事を許されず、カムイはすぐに精鋭の仲間を連れて
次の日暗夜王国を朝早くに出立し
ノートルディア公国へと向かっていた。

まず目指すは黒竜砦と呼ばれる天然の要塞。
そこでは敵対する白夜王国の精鋭達が陣を張って
待ち構えて居ると言う。

順風満帆に見えた行軍だったが、徒歩で歩いて居た
カムイの様子がどんどん目に見えて悪くなって居た。

 

「大丈夫か?カムイ」

 

親友の騎士サイラスが馬から降りて手を

差し伸べて、そして後ろから付いてきていた
執事のジョーカー、妹王女のエリーゼもカムイの変調に対し心配そうに
覗き込んで居た。

「……っ、皆さん。私は平気です……。構わず進軍を」

 

カムイの顔色は真っ青になっており、額に脂汗が浮かんで居た。
寒気がするのか小刻みに体を震わせてサイラスに体を支えられて居る。

 

「カムイお姉ちゃんっ!とてもじゃないけど平気には見えないよ。
今から治癒の杖(ライブの杖)で治すね」

 

エリーゼが、真近くまで寄って来ると杖をかざし得意の
治癒魔法でカムイの体調を治そう……として来たが。
数回ライブの杖の光を当てられてもカムイは、変わらず苦しそうにして居る。

「あれっ?なんでー?」

不思議そうに瞬きするエリーゼだったが、その横でジョーカーが
恐ろしく険しい顔をしてその様子を見て居る。

そして黙って居る余裕も無くなったのか
エリーゼのライブの杖を横からひったくるようにして
奪い「カムイ様、エリーゼ様。ここは私にお任せください」

先程と同じく杖を振り、不調を癒そうとする。
しかし、結果は先程と同じで何の変化も起こらなかった。

「くそっ、カムイ様が苦しんでおられるのに何故治癒の杖が効かないんだ!
この不良杖が!」

 

最後にはジョーカーは怒りだし、冷静の仮面をかなぐり捨てて杖に
八つ当たりして悪態をついて居た。

「……とりあえず、引き返すか?カムイ」

カムイを腕に抱きかかえる形で彼女の耳にそう囁く。
目を瞑り苦しそうなカムイだったが、その言葉には緩く首を横に数度振った。

「今ここで、引き返したら……ガロンお父様はさぞかし
がっかりされるでしょう。どうしても、這ってでもノートルディアを目指さないと」

「よし、そこまで決心があるなら俺は協力する」

今度はカムイを横抱きにする形で
持ち上げ自分の馬の鞍の前に乗せようとする。

「おい、てめぇ。一人で美味しいポジションを取りやがって」
と言うジョーカーの本音混じりの嫉妬を背後に聞きつつ、
サイラスが少し振り返ると剣呑な雰囲気の瞳でこちらを見据えるジョーカーと
とても心配そうに、そして少しだけ涙を目の端に浮かべたエリーゼ王女が
見えた。

「カムイはご覧の通りだが、目的のノートルディア公国への進路は変わらない。
このまま進むんだ!」

それが、指揮官であるカムイの意志だと言う事を周囲へ知らしめて
馬の手綱を握り前に乗ったカムイを労わりながら
軍の皆に合わせて馬を進めるのだった。

そして大分歩いた頃、漸く第一の関所とも言える黒竜砦に
到着する。そこは、大きな洞窟のようにも見える黒々とした入口が
口を開けて待っており、奥には和装に武具を付けた白夜王国
兵士がたむろして居る。

こっそりと離れた所で、木々の間に隠れつつ砦の様子を探る偵察役の盗賊ゼロが
言うには、正面から突破するより砦を構成する壁の脆い所を崩して一気に中へと入り
隙をつき各個撃破するのが良いとの事だ。
だが、肝心の指揮官のカムイがますますぐったりとして
しまってサイラスの馬の上で顔を項垂(うなだ)れさせて居た。

「……す、すみません」

消え入りそうな声で告げ、その顔はますます青白く苦し気な様子だ。
だからサイラスが、カムイの代理として今は指示を出しているのだ。

 

<Part2へ続く>