徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ファイアーエムブレムif 二次創作小説・暗夜王国編Part2.

ファイアーエムブレムif 二次創作小説・暗夜王国編Part2.

『第9章・再びの試練Another』Part2.

 

「砦の正面を大きく迂回して中の兵に気づかれないように横の壁に取り付き
崩すんだ!」

とそこで、前方を横切る小さな影に全員が気が付く。

「……えっ?なんで子供が?」

 

見た目は、暗夜王国のダークマージ風の服装をした小柄な女の子が
平然と歩いて居た。
黒を基調としたかなり露出度の高い服装で、紫と黒が混じったような
くせ毛がかった髪を腰まで伸ばし
妙に落ち着いて場慣れしている表情でこちらをちらっと見た。

サイラスが代表として馬から降りて進み出ると、女の子は

「貴方達暗夜の兵なのかしら?私はニュクス。言っておくけど私は子供じゃないから保護なんて要らないわよ」

どう見ても11~12歳程度だがその瞳に宿る色合いは
年には似合わず落ち着いて居る様子だ。

「俺はサイラス。暗夜の騎士だ。そしてこちらは暗夜王国のカムイ王女と仲間達だ。
いや、ここに居るとすぐ戦闘になって本当に危ないぞ。良い子だからこちらで大人しく……」

「だから子供とは違うと言って居るでしょう?暗夜も白夜も子供だ子供だと追いかけまわしたり
捕まえようとしたり……あら?」

そこで、その女の子……ニュクスはサイラスの馬に寄りかかって倒れ込んだ姿勢のままで居る
カムイの方へと目を遣る。

「……その子。酷い呪いがかかっているわね」

「……ん?呪いだって?」

「直ぐに降ろして見させて頂戴」

サイラスは、ゆっくりとカムイを馬の背から降ろし前に抱え上げそしてニュクスの前で座り膝を付いてよく
見えるようにした。

後ろで、行軍について来たオーディンバツの悪そうな顔している。
その横でゼロが、腕を組みながら「なんで呪術の専門家のダークマージの
お前がカムイ王女の呪いに気が付かなかったのかねえ?」
と半分面白そうに半分皮肉っぽくオーディンに話しかけて居た。

「お、俺の専門は人を呪うと言う忌まわしき縛鎖では無い。

例えるなら聖浄な星海の内の一つ
の力を借りてそれを我が闇の力と融合させ真なる秘められし

奥義を……って聞いているのか?」

等と勝手に繰り広げられる茶番もニュクスの「しっ!」と言う
鋭いジェスチャーと声で一気に静かになる。

胸元から魔導書、そして腰に下げた何か黒くて細長い乾燥植物が入った瓶を取り出しニュクスは
解呪の簡易儀式を始めようとしていた。

蓋を開けた小瓶の中の植物を瓶を逆さにする事で取り出し、手の平で握りしめクシャクシャにする。
カムイの鎧の胸元にそれを置くと、魔導書を開き
その一節を3度繰り返して唱える。

『枯れし井戸が滾々と、再び生命の輝き戻れよ、悪しき呪いは悪しき術者の元へ』

と言うような意味合いの呪文だが、高速で圧縮して唱えているので
周囲には意味は聞き取れないだろう。

唯一、オーディンだけはその呪文の内容を
分かったような分からなかったような微妙な顔付きで居るのだが。

徐々にカムイの頭の先から黒くてもったりとした煙が吹き出て、
それは天へと昇って行った。

「……ハッ!」

途端にカムイがサイラスの腕の中でゆっくりと体を起こす。

「大丈夫か!カムイ。実はこのニュクスさんが……」
「はい、意識が朦朧として居ましたが話は聞こえて居ました」

体を蝕んで居た呪いが、すっきりと出て行き徐々に顔色が良くなって行く。
そしてほぼ動けなかった体が嘘だったように体を起こすと
前を向く。


「皆さん、もう大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」

「お姉ちゃん!」

エリーゼが、カムイの服の裾を握りながら満面の笑顔を見せて居た。
ジョーカーも、感動したような顔で明るく頷いた。
他の者達、エルフィにハロルドも安堵の笑みと爽やかな笑みを見せて居た。
ゼロはふん!とシニカルに笑いオーディンは静かに拍手をして居る。

これで怖い物無しとばかりに、カムイ軍が湧き立つ雰囲気の中、ニュクスは素っ気なく
その場から一人離れて行こうとする。カムイはいち早くそれに気が付き立ち上がり、

「あっ、ニュクスさん。お礼が遅くなりましたがありがとう御座いました」
「礼なんてよして、ほんの気まぐれよ」
「あの……何故この場に貴方が一人で居たのか私には分かりませんが、
私達と暫く行動を共にしませんか?」

そのカムイの言葉を聞いてニュクスは、

「面倒事はごめんだわ。私はただ、誰の目にも触れず一人で生きて居たいだけ」

「一人……貴方は一人なんですか?ご家族やご友人の方は?」
「ええ、そんな人達とっくに居ないわ。みんな私の事を気味悪がって
去って行った。だから私は一人で生きていくのよ。それだけよ」

 

<続く>