徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ベルウィックサーガ・4週目攻略メモ その33

第10章特殊依頼「奪われた宝剣」 10ターンでクリア
 
出撃要員:セネ・クレイマー・ファラミア・ラレンティア・
シルウィス・イゼルナ。
 
攻略メモ:逃げ去る盗賊を全て倒し、
コレクターアイテムのアルバトロスもゲット。
 
 
【オマケ・ミニ小説~特殊依頼その4
 
 
英雄王ジスターは問うた。
 
「汝、剣を極めし者か?」
 
と。
その問いに一人の中性的な顔をした人物が頷いた。
 
「我が名は、剣聖アルシオーネ。戦いを終わらせる事を
望むなら貴方に力を貸そう。」
 
それが2人の英雄の出会いだった。
世は混乱の時代。
500年続く争いにも黎明期はあった。
ラーズ帝国とヴェリア王国が戦い始めて50年近くが
経った頃。
その頃に、活躍したとされる英雄王ジスターと剣聖アルシオーネ
話はヴェリア王国の後世に伝説として
語り継がれていた。
親友でもあり主従関係にあった、この2人の話は
子ども達の間のみならず
大人達にも広く親しまれてきたのである。
 
ナルヴィアで傭兵をやっているクレイマーも例外ではなかった。
子どもの頃に幾度となく聞かされてきた伝説の英雄達の物語。
中でもクレイマーが一番好きだったのは、剣聖アルシオーネだった。
アルシオーネは、性別不詳の剣士として
物語に出てくる。
ある者は、長い髪を風になびかせる細身の女性剣士だと言い、
またある者は整った顔立ちの剣豪の男性だと言い伝えている。
どちらにしろ並外れた剣の腕前を持つ、という点では共通している。
 
「ああ、今日もエストックは素晴らしい輝きだな!
惚れ惚れするぜ。それにこっちのキルソードもなかなか…。」
 
一人ナルヴィアの館の待合室で、己の携帯袋に収まっている剣を
見やりながら恍惚とした表情を浮かべている金髪の少年が居た。
名をクレイマーと言う。
そう、クレイマーは所謂「剣マニア」なのだ。
剣をこよなく愛し、武器の手入れを怠らない。
今日は、このナルヴィアの一角にあるリース公子の執務室に
呼ばれてこうして待合室で待っている訳だが…
そんな時でも剣を愛でる事を忘れないクレイマーだった。
パタパタと軽い靴音がして毛織の絨毯の上を
滑るように歩くシノン騎士団の秘書官を務めるティアンナが
クレイマーを呼びに来た。
剣を眺める、クレイマーに声をかける。
 
「リース様とウォード隊長が、お部屋に来られました。
どうぞ執務室まで来てください。」
 
そしてやってきたのは執務室。
大きな窓には分厚い赤の絹のカーテンがかかり、
置いてある高級そうな大きな机もクレイマーにとっては
相変わらず見慣れぬ物だった。
珍しさからきょろきょろと不躾に辺りを見回せば、
コホンという軽い咳払いの音をウォードが
立てる。
慌ててそちらへ視線を向けると、椅子に座ったリース公子
その後ろで立っている
ウォードが見えた。
慌ててぺこり、一度軽く礼をすればウォードが口を開く。
 
「お前をここに呼んだのは、次の任務で力を
貸して欲しいからなのだ。」
「俺の力が?雇用料さえ払ってくれれば、どこにでも行くぜ。」
 
 
ウォードは、任務の内容について話を始める。
最初は、普通に聞いていたクレイマーだったが
話を全て聴き終えると、身を乗り出すようにして
返事をした。
 
「ああ、勿論だとも。俺は剣聖アルシオーネに憧れている。
誰よりも、だ。そのアルシオーネの剣の奪回なら
命懸けでやってみせる!」
 
話の内容は、こうだ。
ナルヴィアのとある神殿から
ひと振りの宝剣と幾ばくかの財宝が盗賊達によって盗まれた。
その宝剣とは、剣聖アルシオーネが使ってた
と言われる「バルムンク」と呼ばれるものである。
奪われた品々は古い遺物なので、奪回には少数の
信頼の置ける者を向かわせたい
と言うものだった。
クレイマーは張り切って、部屋を出ると
 
「やるぞ!」
 
という掛け声と共に走り出した。
 
 
傭兵ギルドに戻ると、そこには盗賊のセネが居た。
 
「やっほー、遊びに来たよ!はい、これ差し入れ。」
 
ぽん、と差し出されたのは美味しそうな焼き菓子の入った
紙袋だった。
 
「おっ、セネは気がきくな!手作りか?」
 
そんな軽口を叩きつつ満面の笑顔で袋を受け取るクレイマーだった。
 
「まあ、そんなところね。ところで次の依頼でリース様に
雇われたって聞いたけど?」
「ああ、そうだ。耳が早いな。実はバルムンクの…」
 
と言いかけて慌てて口をつぐむ。
この依頼の内容は出来る限り秘密にしておいてくれ、と
ウォードから言われたのを思い出したからだ。
ここは他人が大勢居るギルドだ。
何処で話を聞かれているか分からない。
 
「その話は大丈夫、あたしも同じく奪回に向かうから!」
 
明るくそう言うセネを前に、クレイマーはほっとした様子で
表情を元に戻すと、ひょいと差し入れてくれた焼き菓子を
自分の口に放り込む。
 
「この菓子美味いな!これなら幾らでも入りそうだ。」
「ありがと。」
 
その言葉がお世辞では無い、そもそもクレイマーの性格からして
お世辞を言うような人物では無いと分かっているから
セネの頬も自然に綻ぶ。
そして美味しそうに焼き菓子を頬張るクレイマーに
 
「相変わらず剣聖アルシオーネの話となると
気合が入っているわね。
まあアルシオーネ様はかっこよくて素敵な人らしいけどっ。」
「そうさ、俺もいつか英雄と呼べる人物になれたらと
思っている。剣聖アルシオーネは憧れであり目標なんだ!」
 
思わず拳を握りしめて力説するクレイマーだった。
そんなクレイマーの姿を幾度となく過去に見てきたから
セネは、何時通り心の中で密かに呟く。
 
(男の子って単純よね…でも、そういう、まっすぐな性格は
嫌いじゃないわよ。)
 
と。
 
夢を語るクレイマーはきらきらとした目をしていて
純粋だ。
純粋な輝きは消えることなく、少年の未来に光を灯す。
宝剣の奪回に向かう日は数日後に迫っている。
セネはひらりと身をかわすとクレイマーに軽く手を振って
傭兵ギルドを後にするのだった。
 
 
~終~ NEXT 「スコーピオン」