徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ベルウィックサーガ・4週目攻略メモ その38

12章依頼「異教の神」 18ターンクリア
 
出撃要員:リース+ウォード・ペルスヴェル・オルウェン・
エニード・イストバル・アーサー・ルヴィ・ラレンティア・
ファラミア・フェイ
 
【メモ】
18ターン目 アルフォンヌ・ラスプーチェ撃破
 
 
オマケミニ小説~12依頼
 
清涼な泉の流れる森の奥深くに。
一人の少女が訪れて座り泉を覗き込んでいた。
水の波紋を見つめながら、その顔は
何処か浮かない色が見える。
何かを思い悩んだ風に黙っているその少女の
名前はリネット。
青い空のような色の髪をくるりと巻き毛にして両側に垂らし、
今は質素なマントとワンピースを纏っている。
その心に去来するのは、『戦争の行く末』
そして『兄リースの事』
についてである。
特に後者は、リネットにとっては重大な事で
毎晩眠る前にリースの無事を祈ってヴェリアの聖堂に
足を向ける程である。
ふぅ、と軽く息を履くと足を崩して俯く。
 
(リース兄様…今頃どうしているのでしょうか。)
 
リースがシノンを離れてから、早数年が
経とうとしていた。
今までは手紙で安否を気遣っていたのだが、
戦争が激化した今では、ナルヴィアへと文を届ける術が
なくなっていた。
リネットがため息を付くのも無理は無いのである。
暫く泉を見ていたリネットは、傍らに一人の
女性が近づいてくるのを
気がつかずに居た。
ふ、と座っている姿勢から目をあげるとそこには唐突に
人が現れたかのように見えた。
 
「…ッ!?」
 
吃驚したかのように目を瞬かせるリネットにその女性は
涼しげな声で話しかける。
 
「セレニアの乙女よ…貴女にこれを届けに来ました。」
 
 
黒い髪を豊かに流し、白い透き通るようなローブを
羽織ったその女性は慈母の様な笑みを浮かべている。
怪しい人物には見えず、むしろ何処か神々しい感じの人物だった。
右の手に黄金色に輝く魔導球(オーブ)を、
左の手に軽量の弓を携えている。
 
「貴女は…?」
「私はヴェリア女神の使いです。貴女こそ、女神に選ばれし
乙女…さあこのセレニア弓とパラスセレニアを受け取るのです。
そして、人々を導き、立ち上がってください。」
「女神様の…使い…。」
 
リネットは吃驚したかのように、そう復唱すると
おずおずと、女性の手から弓と魔導球を受け取る。
そしてお礼を言おうと目の前の人物に話しかけようと口を
開いた時、ぱぁっと光が眩く放たれて暫し目を瞑る。
次に目を見開いた時には既に女性の姿は掻き消えて居た。
 
(これは…夢?でも、私の手の中には…。)
 
そう、弓とオーブがある。
とりあえずシノンの館に帰って落ち着こうと、泉から
離れ帰途に付くリネットだった。
 
 
館に戻ると思いがけない来客が待って居た。
 
「ベルナード様!?」
 
赤い絨毯の上に佇むのは、旅装をしたベルナードその人だった。
駆け寄りながら、笑顔を見せるリネットに
ベルナードも口元を緩く釣り上げて笑みを返すと
口を開いた。
 
「久しぶりだな。リネット。
実は私はベルウィック島に幽閉されていた所を
リース公子に助けられたのだ。そして命を長らえて
ここに居るのだよ。」
「リース兄様が!その話を詳しくお聞かせくださいますか?」
 
ベルナードをソファとテーブルのある貴賓室へと誘導すると
リネットは、話を聞く姿勢で居た。
ベルナードはそんなリネットの様子におや、と僅かばかり
眉を動かしてその手元の弓とオーブを見る。
 
「君のその弓と魔導球は…?」
「これは女神の使いと名乗る方から頂いたものです。」
「では私の話の後にその話を聞かせてくれるかい?」
「はい、勿論です!」
 
 
メイドが室内にお茶を運んでくると
ベルナードとリネットは向かい合ってソファに腰掛けた。
ベルナードは、自分がウォルケンス王の怒りを買い
危うく処刑されそうになった事。
そこをリースに連れられた王の妹のシェンナ王女の説得で
決意を固め再び流刑の島の外に戻れた事。
リース公子と会見してリネットの事を頼む、と懇願された事
等を話した。
 
(リース兄様は、遠く離れた地でも私の事を気遣って下さる…
本当に嬉しい事だわ。)
 
ベルナードの話を一部始終熱心に聞いていたリネットは
心の中が暖かくなるのを感じた。
 
(出来ることならナルヴィアに赴いて
リース兄様のご無事な姿を一目でも見たい。
でもそれは叶わぬ事…今はベルナード様がお越しくださって
リース様の話を聞けただけでも…幸せと思わなくては。)
 
今度は、自分が話す番だとばかりにリネットは
女神の使いに出会った事、託された弓と
オーブについて話をした。
ベルナードは最初驚きを隠せない様子だったが
話を終わりまで聞くと、真剣な表情で
リネットに問う。
 
「セレニア伝説の事は知っているね?」
「はい、有名なお話です。セレニア、レイア、リアナ3女神の
代行者とも言うべき乙女達…その内の一人の事ですね。」
「そうだ。君は女神に認められし者…という訳だな。
リネット、君はこれからミネバの砦に行って
苦しみにあえいでいる大勢の難民を救うのだ。」
 
唐突なその言葉に、リネットは『えっ』と言う顔をして
ベルナードを見つめていたが
やがて事の重大さが分かったのか暫し黙った後静かに
頷く。
 
「勿論、ベルナード様も助けてくださいますよね?」
「ああ。リース公子と約束したからな。
それに私は君の義父であるバーンストル公にも
大変に世話になった。
いや、これは個人的な話に
なってしまったが…君が本当に女神の啓示を
受けた者ならば人々は君を頼って集まってくるだろう。
もしかしたら、帝国に一矢報いることができるかも知れない。」
「一つ聞きます。
私がミネバの砦に行くことによって
戦争が終わるのを早められますか?」
「その可能性は大きいだろう。」
「それならば…。」
 
 
(戦争が終結することによってリース様が戦場で命を落とす危険が
なくなるのならば。)
 
 
「では明後日までに用意をして、向かいます。
ベルナード様、今日はお疲れでしょう。
この館に泊まっていかれますか?」
「いや、気遣いは有難いが私の存在が公になっても
困るのでね。ウォルケンス王は今頃行方を血眼になって
探しているだろうし。
街人に扮装してどこか宿でも探す事にするよ。」
 
 
ベルナードはそそくさと身支度をすると
立ち上がりお茶のお礼を言って館を出て行った。
その後ろ姿を見送りながらリネットは、
館の外を見つめた。
辺りは、既に夕刻の時間だ。
向こうに広がる赤い夕焼けの景色を見ながら
リネットは、これから忙しくなるであろう事を
うっすらと予想しながら
手元の魔導球を青い瞳で見つめた。
黄金の色に輝くその魔導球は光の反射によってその
色を神秘的に
変えながらそこに在った。
 
~終~ NEXT 沈黙の街