徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ベルウィックサーガ・4週目攻略メモ その39

13章「沈黙の街」  10ターンクリア
 
【備考】
飯→ルヴィ(好物)、リース(好物)ウォード(普通)→サーモンムニエル
フェイ(普通)、ファラミア(好物)→カモのロースト
ラレンティア(好物)、パラミティース(好物)→カニの甲羅焼き
シルウィス(好物)、イゼルナ(好物)に野苺の盛り合わせ
 
出撃要員:リース+ウォード・パラミティース・
イストバル・ラレンティア・
アーサー・ルヴィ・ファラミア・
フェイ・セネ・イゼルナ
 
 
【オマケ・ミニ小説~13章】
 
セレニアの乙女がミネバ砦に赴いてから早
1ヶ月が経とうとしていた。
その間に、人々は様々な奇跡を
垣間見る事になる。
セレニアの乙女は誰にでも優しく、
戦火に追われて傷ついた者達を
一生懸命世話していた。
ある者は、乙女に触れられただけで
視力を失った目が元通り見えるようになり
またある者は動かなくなった足が
治り歩けるまでに回復していた。
セレニアの乙女に対して最初は半信半疑だった者
達も、その奇跡の数々を見て次第に
乙女に対して信頼を寄せ、そして帝国に対する
戦いの結束を固めていったのである。
それは一言で言うならば乙女の
カリスマ、とでも言うものだろうか。
戦いに嫌気が差し、不満を募らせていた
同盟の人々は乙女の下に集い「自由ヴェリア同盟軍」として
帝国へ反撃を試みることになる。
乙女、リネットの側には黒いローブ姿で
フードを目深にかぶった
一人の男軍師が付き添っていた。
その軍師の講じる策は的を得ていて、向かう所常勝。
しかも軍自体の結束力が高いので帝国の軍勢を脅かしつつある。
帝国の方にも、その情報は流れていて
「セレニアの乙女の軍団恐るべし。」との
見方が強まりつつあった。
 
 
そんな中での突然の「休戦協定」の話が
ウォルケンス王の下へと
密かに届いていた。
その内容はセレニアの乙女の身柄の引渡しを
要求するものであり
それと引き換えに休戦を成すというものであった。
小心かつ、猜疑心の強いウォルケンス王は
初めは訝しんでいたが
帝国からの使者の巧みな弁舌に乗せられて
また側近のヘルマンの意見を聞きながら
休戦協定の話を呑むことになる。
そしてミネバ砦にナルヴィアから使者を遣わせて
セレニアの乙女を、連れてくるように命じた。
数日の時の後、リネットの下に国王からの使者が来る。
リネットはその命令を受けて、侍女のカサンドラのみを
連れてナルヴィアへと出立の準備をしていた。
黒衣の軍師は黙りこくってその姿を見つめている。
その胸中に去来する物は、不安しかない。
セレニアの乙女と言う象徴を失った後
人々が離散するのは目に見えていたし、
烏合の衆と化した民衆が帝国に易易と討ち取られるのも
分かっていた。
だが、相手は国王の命令である。
それにリネットは喜んでいる風であった。
 
「私が赴く事で休戦条約が結べるのなら…喜んで。」
 
その言葉を聞いて黒衣の軍師(実はその正体は
ベルナードであるのだが。)は
そっと人知れずため息を吐くのだった。
 
 
「お前が、セレニアの乙女か。顔を上げよ。」
 
尊大な態度で無遠慮にじろじろと
リネットを眺める国王ウォルケンス。
 
「はい、この度休戦条約の使者として帝国へと赴く為に来ました。」
 
王の椅子の前で片膝をついて頭を下げていたリネットは
顔を上げてそう告げた。
 
「そうだ、帝国からの条件はセレニアの乙女一人で来いとのことだ。
ベルウィック同盟の長として
命ずる。見事休戦条約を結んでこい。」
 
尊大な態度のウォルケンスに嫌な顔一つせずに、深く頷くと
 
「お任せください。必ずこの戦争に終止符を打ってみせます。」
 
リネットは汚れのない真摯な瞳で王を見上げそう言葉を紡ぐ。
その青い瞳はどこまでもまっすぐで、
自分のこれからの運命を知らずにいるゆえか、
迷いがない。
リネットの心にあるのは、
正に戦争を、終わらせること。
その為ならば、帝国へ使者として赴くことなど
容易いことだった。
リネットが一礼して謁見室から下がると、
ウォルケンスは側近くに仕えるヘルマンとパドルフに
くつくつ、と笑ってみせて
こう呟く。
 
「あんな何処の馬の骨とも分からない小娘一人の命で
休戦が成るならば安いものよ。
帝国は、存外馬鹿なのだな。」
 
パドルフは、
 
「ははっ、左様で…。」
 
と相槌を打ちいつもの追従のポーズを崩さずにいた。
 
一方のヘルマンは表面では穏やかな笑みを浮かべていたものの
内心では
 
(馬鹿はお前だ。ウォルケンス。セレニアの乙女を失えば
西部地方の同盟軍の反撃も止まる。
自由ヴェリア同盟はバラバラになり帝国に
仇なす脅威は無くなる。その時こそ、帝国が同盟を
討ち滅ぼし完膚なきまでに叩きのめし
ラーズの神の教えの下へと導くのだよ。くっくっく。)
 
ヘルマンの内心の声は表へは届くことなく、
傍から見れば忠臣その物と言った顔つきで
佇んでいる。
 
長く続いていた戦争に休戦が成されると知って
今までの殺伐とした空気から一転、宮廷の中は
和やかなムードに包まれた。
これでナルヴィア陥落の心配も無くなった。
ギスギスとした空気の中で神経を尖らせていた
ウォルケンスも久しぶりに機嫌が良さそうだ。
だが、まだ休戦が確実に成された訳ではない。
バストンでは未だにロズオーク公やその息子
バンミリオンが帝国との戦いに必死だったのである。
 
「ふん、あの小僧めもここらで厄介払いをするか。」
 
黒い笑みを顔に浮かべて、ウォルケンスは
リースを宮廷に呼ぶように命ずる。
次の任地はバストンの街。
帝国の大軍が攻め寄せてきているバストンに
リースを放り込めば生きては帰ってくるまいとの魂胆だ。
 
「それは良い案でございますなあ。」
 
ウォルケンスの顔色を伺いながら
パドルフが何度も頷く。
ヘルマンも黙りこくって、パドルフと同じ意見であるかの
ような顔をしているが、内心ではその言葉に危惧を覚えていた。
 
(それはどうかな…リースは
着実に力を付けつつある。
今帝国にとっての最大の脅威はセレニアの乙女ではなく或いは…
リースとその騎士団なのかもしれぬ。)
 
だが、このバストンの戦いでリースが命を落としてくれれば
これ程の厄介払いは無い。
リースのシノン騎士団の兵500に対して
帝国は一万。
勝つ見込みの無い、絶望的な戦いが
今始まろうとしていた。
 
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