徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ベルウィックサーガ・4週目攻略メモ その28

 

第9章依頼 ボルポス谷の悪魔 123ターンクリア

 

 

 

出撃要員:フェイ・ファラミア・セネ・イゼルナ・エルバート

ラレンティア・イストバル

 

 

 

【備考】9章依頼後、イストバルクラスチェンジ→ハイハンターへ。

 

【メモ】

4ターン目、ギーバス撃破。

9ターン目、フリース撃破。

43ターン目、エルバート戦闘不能(治療)

115ターン目、ラオン撃破。

 

 

 

 

【オマケ小説~9章依頼】

 

周囲を切り立った崖に囲まれた谷の底で

その男は疾走していた。

手には東国の剣。

服装は、東方剣士と呼ばれる戦士が

好んで着る前合わせの黒の着物である。

黒く長い髪を風になびかせ、嬉々とした表情で

呟く。

 

「今回の相手はどれぐらい俺を楽しませてくれるのかな。」

 

 

男の名前はフリース。

戦う事を喜びとし常に強者を求める戦闘狂である。

通称「ボルポス谷の悪魔」と呼ばれる

山賊の中核は、フリースを始めとする

男3人からなっていた。

フリースの他にギーバス、ラオンという名前の

者がいた

盗賊団の首領であるギーバスは賞金首として

ナルヴィアの街の人々を震え上がらせ、

ラオンは暗殺術を得意としており道行く人を音もなく背後から

一撃で殺し、金品を巻き上げていた。

あまりのその見事な手際により、姿見えぬ悪魔が谷には

住むという噂が同盟軍の間で広まっている。

その内に、リース率いる騎士団へ依頼が舞い込み、

ギーバス達を退治して欲しいと頼まれた。

早速派遣された兵士達は狭い崖の下で

悪戦苦闘しながら、通路を慎重に進んでいく。

崖の上からは弓を持った盗賊団の一員が的確な

射撃で矢を放ってきて非常に厄介だ。

比較的弓を回避できるエルバートを先頭にして

部隊は進んでいく。

 

 

 

任務地に着く前に、フェイは酒場に居るウォローから

とある話を聞いていた。

 

「今度の任地へは

 お前が赴くそうだな。一つ、気になることがある…。

ボルポス谷の悪魔と呼ばれるのはヤツの事かもしれない。」

 

ウォローはそう言った。

 

「奴とは誰のことですか?」

「フリース、という東方剣士だ。同じ孤児院で育ち、

修業に行くと言って別れたきり

音沙汰がないのだが…。」

「何故、そのフリースという人物だと思うのです?」

 

 

ウォローは静かに目をつぶって、答えた。

 

「直感というものだろうな。

後は、俺なりに調べてみた

ことなのだが、同盟軍や民間人を襲う手口、というものが

東方剣士のやり口なのだ。

俺も習得している技、『死闘』。

その技でやられた者には体が元の姿の判別無い程に

切り刻まれている。

そんな技を習得している者は数少ない…

ナルヴィア近郊に居る

東方剣士の数もだ。」

「…。」

 

「もしフリースに出会ったら俺の事を伝えてくれまいか。

昔の馴染みが罪なき人を殺し続けるというのも忍びない。」

「分かりました。尽力しましょう。」

 

フェイは力強く頷いた。

 

 

 

そして、斥候の連絡による一人の東方剣士らしき人物が

シノン騎士団に向かって急接近しているという情報が入る。

しかも単騎でだ。

余程腕に自信があるのか、それとも無謀なのか。

フェイは、その東方剣士の情報を聞くと

 

「ここは私に任せてください。」

 

と言って飛び出していった。

その後を密かにファラミアが追いかける。

 

 

 

「来たな!」

 

フリースはすらりと腰に下げていた剣を

抜くと目の前の少女に向き直った。

少女の纏う気は紛れもなく、剣士の気。

そして同じ東方剣士の出で立ちをした目の前の

少女をフリースは「獲物」だと認識する。

 

「……。」

 

少し離れた場所で、青い髪を風になびかせた剣士、

ファラミアが立っている。

 

「二対一か。それもよかろう。さあ、俺を楽しませてくれ。」

 

狂気じみた瞳が、「獲物」を捉えるとまるで

野生の鷹が襲いかかるように

一気に間合いを詰める。

ス…とフェイの足が動き自然と相手の間合いから逸れるように

動く。

じりじり、と迫るフリースに対してフェイは

鞘に収まった剣に手をかけた。

構えを取る。

「居合い」と呼ばれるその技は、命中度と

致命度を高めるための

ものであり、イズミル国に伝わる高等技術である。

ピタ、と動きを止めたフェイに対して

フリースは容赦なく襲いかかる。

死闘とも呼ばれるその技は事前にウォロー

言っていた通り、相手を確実に死へと追いやる恐ろしい

技だった。

 

 

猛烈な突きと、斬りの技が一度にフェイに襲いかかる。

しかしフェイもその剣筋を受け流しこちらからも

軽く反撃をする。

主に、足を狙って切りつけられた剣の軌道は

着実にフリースの動きを鈍くしていった。

 

「一つ、聞きます。貴方は剣士ウォローの知り合いでしょうか?」

「…そんな事を聞いてどうするのだ。」

 

両の足から血をぼたぼたと流して、フリースは渾身の力を

込めて最後の突きを放つ。

その必死の剣は、フェイの髪を一筋斬り、首元すれすれを

通過していった。

首につ、と赤い筋が走り避けなければ致命的な傷となっていたに

違いない。

 

ウォローは貴方が戦う事を望んでいませんでした。

剣を収めてください。フリースさん。」

「まだだ…。俺はまだ血を見たりない。

戦い足りないのだ。

お楽しみは…これからだ!!!」

 

 

壮絶、とも呼べる形相で傷ついた足を庇いながら

尚も前進してくるフリース。

 

「仕方がありません。この技は使いたくなかったのですが…。」

 

途端に、今まで防御姿勢にあったフェイが

鞘を地面に落とす。

少女の体に鋭い闘気が宿った。

それは、フリースという剣の使い手すらも

ぎょっとして僅かに怯ませる程の

強い気だった。

 

「これ程の戦闘力の持ち主とは…フフフ…。

ハハハハハハハ!面白い。かかってこい。」

 

フリースは髪を振り乱し、高らかに笑う。

刹那、風のようにフェイが動いた。

ザン、ザン、斬。

軽快な音と共に剣舞が始まった。

それは神に舞を捧げる巫女の踊り、といった風情だろうか。

いや的確に人体の急所を射抜くその剣の技は

まさしくイズミル国の秘技、「神舞剣」

そのものだった。

 

5連擊と言う通常ではありえない程の攻撃を喰らい

フリースは吹っ飛ぶ。

 

「ぐはあっ…!!!」

「貴方の生命力なら、まだこれから先も生きられるはずです…。

どうか今までの罪をあがなって、生き続けてください。」

 

フェイは地面から鞘を拾い今まで対峙していた男に

背中を向ける。

既にフリースには満足に戦える体ではなかった。

 

「最後に面白い物を見せてもらった。

礼を言う…。」

 

フリースは、両足からも両腕からも

血を大量に流し、そして涙すら流していた。

 

「だが、俺はこんな無様な生など認めない。

これから先戦えなければ何の意味も無い…。」

 

そう言うと、フリースは自らの剣で

自らの喉を掻ききった。

膨大な血しぶきが飛ぶ。

 

「…!?」

 

その行為にフェイは一瞬絶句すると

フリースに駆け寄ろうとした。

それをファラミアが後ろから止める。

 

「構うな。もう死んだ者だ。」

「でも…。」

 

ファラミアの静止に困惑気味の

フェイだった。

 

「この男の本質は『戦い』の中でしか

愉悦を感じないという事…。

剣を振るえぬ体にされた事、

この男にとって既に死ぬ事と同義だ。」

 

ファラミアはそう静かに言うと

フリースの痙攣している体に止めの一撃を

刺すべく剣を持ち上げる。

今度はフェイがそれを止めようとしたが

一瞬早く、ファラミアの剣がフリースの首を

跳ねていた。

 

「先を急ごう。まだ先には何者かが潜んでいる気配がする。」

 

首を失った死骸を前にして、

フェイは唇を引き結ぶと、ファラミアの

声に静かに頷いた。

 

 

 

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