徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ベルウィックサーガ・4週目攻略メモ その29

9章特殊依頼「海の勇者」45ターンクリア

 

出撃要員:サフィア・アーサー・シルウィス・ルヴィ・セネ・ラレンティア

 

 

【備考】家具→コッファー購入

 

【攻略メモ】

お宝を持って逃げる海賊は全て撃破。

30ターン目にヴァイス戦闘不能に。

 

【オマケ・ミニ小説~特殊依頼3】

 

船上でシルウィスは、宿敵であるヴァイスと対峙していた。

緊張の為、指先が少し震えている。

一方のヴァイスはと言うと、余裕の表情で

曲刀を構えてシルウィスの方を眺めている。

その飄々とした態度からは、今が戦闘状態である

という事すら感じ取れない。

 

(ああやって、ヴァイスは私を馬鹿にしているのだわ。)

 

そう思うと怒りで耳まで真っ赤になり

弓につがえた矢を持つ手につい力が入ってしまう。

 

「俺を仕留めるなら頭を狙うのだぞ。

シルウィス。」

「私のやり方はもう知っているでしょ。

狙うのは足よ。両足を射抜いて戦闘不能にするのよ。

指図なんてごめんだわ。」

「ほう、それなら俺はここを動かずに居てやる。

ちょうど良いハンデだろう?」

 

くくっ、と軽く笑ってヴァイスが

その場でぴたり、止まる。

 

「ヴァイス!!!!」

 

遂に怒りが頂点に達する。

渾身の力を込めた矢は、ヴァイスの足元に

まっすぐに吸い込まれていった。

そして。

ヴァイスが地面に膝をつく様がスローモーションのように

見える。

やっと、やっと長年追い続けていた賞金首を

捕まえることが出来たのだ。

だが不思議と勝利の余韻は長くは続かなかった。

追い求める時はあれ程必死だったのに、

達成してしまうとあっけない物だ。

シルウィスがぼうっとしていると

背後で味方の部隊の兵の声がする。

 

「海賊の首領を捕まえたぞ。これで海賊の部下達も

全て捕らえることができる。捕縛を急げ。」

 

 

そして、一週間が経った。

がちゃり、と重い音を鳴らしてシルウィスはナルヴィアの

酒場のドアを開けていた。

昼間の時間だと言うのに、酒臭い店内と盛大に賑う人々の声。

今は静かに飲みたい気分だったので

ウンター席の方へと歩み寄って行く。

すると、見知った背中があった。

 

「シャイア…?」

 

青い髪をゆるく後ろへ流した女盗賊、シャイアが

ウンター席で一人座っていた。

 

「シルウィス…!」

 

シャイアもこちらに気がついたようで、

何時もの調子でキッと睨みつけてくる。

シャイアとシルウィスは犬猿の仲、といっても良い程

仲が悪かった。

だが今日のシャイアは、何時も程元気さが無い。

拍子抜けしたかのようにシルウィスは黙って

シャイアの隣の席に座った。

シャイアの目は赤く泣きはらしていて

目の前の水色のカクテルもあまり減っては居ない。

 

「てっきり…ヴァイスの船に乗っているのかと。」

「白々しいわね、シルウィス。ヴァイスを捕縛したのは

貴女でしょう!?」

 

恨みがましくシャイアが言うのを聞き流しながら

店主のアレックスに酒を注文する。

 

「確かにあの船には貴女は居なかった。

で、どうしてここに居るのよ。」

「それは…ヴァイスの命令で船を降ろされたからよ。

私は残る気で居たのに…。」

 

シャイアは目の前のグラスをじっと見つめると、

肩を落としてそう呟く。そして言葉を続けた。

 

「知ってる?ヴァイスはね、ナルヴィアの貧しい人々の為に

義賊的な事もしていたの。

金持ちの商船を狙っては、金品を巻き上げ…

それを貧困層へと流す。

貴女はそんな彼の本当の顔を知らないから、

そうやって賞金首だ、なんだと言って追いかけていられたのよ。」

「……。」

 

シルウィスもその噂はここ数日で知った。

黙ってシャイアの言葉を聞くと、運ばれてきた

酒の方へと手を伸ばす。

トマトをベースに作られた赤くて淡い色のカクテルだ。

アルコール度数は少ないものの、さわやかなトマトの酸味が

楽しめる一品として、シルウィスは、いつもこれを注文していた。

グラスの中に氷が浮かんだキンと冷えるそれに

手を伸ばしながら、言葉を紡ぐ。

 

「でも、ヴァイスが賞金首だった事は確かでしょう。

それだけ悪行を重ねてきたのだから、捕まっても当然。

…だと今までの私なら言うはずなんだけどね。」

「…?」

力なくそう言うシルウィスに、シャイアは不思議な物を見るかのような

顔で言葉を返す。

 

「じゃあ、どうだと言うの。ヴァイスは既に捕まってしまった…

最後にはおそらく縛り首にあうのよ。

今更貴女が心を変えて

ヴァイスの事を認めたとしても…

ヴァイスへの処遇は変わらないわ…!」

 

半分泣き顔でそう言うシャイアをシルウィスは妙に冷めた目で

見つめていた。

グラスに入ったカクテルが喉を潤す。

赤いその色は血の色をも思わせる。

 

(そう、ヴァイスは処刑されるのでしょうね。)

 

心の中でそう静かに呟くと、

尚もこちらに恨み言を言うシャイアの言葉をじっと聞く。

そうやって20分程経っただろうか。

流石に恨みつらみも言い疲れたのか、シャイアはぴたりと

口を閉じた。

聞いているのかどうか定かではないシルウィスを前にして

戸惑っていた、というのもあるかもしれない。

 

(私は…私の都合だけで、ヴァイスを捕まえてしまった。

賞金首としてのヴァイスだけをただ追いかけて…

こんなにも海賊のヴァイスを慕う人や助けられた民達の

が居る事も知らずに。)

 

シルウィスは、そう心の中で呟くと黙って

料金分のコインをカウンターに置いた。

 

「まいど!」

 

愛想良く相好を崩す店主アレックスの方を見ずに

黙って席を立つ。

シャイアの方にも視線を向けることなく、

シルウィスは黙って酒場を後にするのだった。

 

 

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