徒然の都

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ファイアーエムブレム聖戦の系譜・二次創作小説『呪縛』Part3

ファイアーエムブレム聖戦の系譜・二次創作小説

『呪縛』Part3

 

バーハラ城の一室で3日3晩篭もり、ユリウスはイシュタルの

蘇生を試みた。
命の灯は最早一刻の猶予も無い程切れ切れとなっており
並みの治療では彼女の復活は難しいであろう。
治癒術を得意とする暗黒司祭すら身辺に寄せ付ける事もせず、ユリウスはイシュタルの
蘇生に成功するが……彼がどんな秘術を用いてそれを成したかは公には
されて居ないのだ。
切り刻まれた肉体を魔力によって強制的に繋ぎ合わさせ、
そして飛びかけた魂を呼び戻すと言う
禁術でもってイシュタルは、息を吹き返したがその代償として
体中に絶えず鈍痛が走り一週間は歩く事も出来ずまた、
ベッドから起き上がれず
寝たきりとなったのであった。
弱りきったイシュタルに対しユリウスは何度か見舞いに来た。
そして自ら来られない時は部下の司祭達に手紙を持たせてそれを
イシュタルへと送り届けたのであった。


「体調は大丈夫か?イシュタル。お前の体はとても大事な物だ。
即ち、次なるロプトウスの器となる子供の母体として相応しい。
せいぜい、食事をしっかりと取り休養し体を厭え。」


手紙の内容は始終この調子である。
だが、イシュタルはその手紙を貰っただけで心に沸々と暖かい感情が
込み上げてきてユリウスのその言葉を絶対の物として受け取るのである。
それは、最早盲目的な恋であった。
正直な所、イシュタルは子供狩りと言う行為に疑問は抱いていたものの
それを告げてしまえば彼の不興を買ってしまう。
故に、心を痛めながらも子供達を集めそして聖戦士の
直系の末裔にもかかわらず、自ら進んで暗黒教団の
悪業に協力をしている事になる……。

 

意識がはっきりと戻ったのは3日前の事。

そしてそれから4日が過ぎようとしていた。
イシュタルは体に鈍く走る引き攣れたような
痛みを感じながらうなされていた。
食べられる物は白粥だけ、それすらも大半を残すと言う有様である。

(ユリウス、様……。)

蘇生されている最中に触れられた微かに意識の
底に残るユリウスの燃え盛るように熱い掌を思い起こしながら
痛みにただ、涙を零さずに耐えていた。

 

「失礼いたします、書状をお持ちいたしました。」


黒いローブのフードを目深にかぶった暗黒司祭が慇懃無礼な態度で
だが、ある程度の敬意は払いつつ手紙を差し出してくる。
それを手に持ち、蜜蝋で封をされた紙の端をペーパーナイフで切り取ると
中には見知ったユリウスの筆跡がある。

 

『イシュタル、体の調子はどうだ?明日はお前の為に2人だけの晩餐を
行おうと思う。夜19時に私の私室へ来い。』


体は本調子では無いが、夕食に招かれたとあっては無様な姿を
晒す訳には行かず、イシュタルはベッドの中で背筋を正すと
呼び鈴を鳴らし、自分付きの侍女の一人を呼び出す。


「晩餐に着ていく絹のドレスを大急ぎで用意して。
それと、明日は何時もより明るめのお化粧をして欲しいの。」

 

Part4に続く