徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ファイアーエムブレム聖戦の系譜・二次創作小説『呪縛』Part4

ファイアーエムブレム聖戦の系譜/SS
『呪縛』Part4

 

それと耳に付けるルビーのピアス、靴等も用意するように言うと
それだけで疲れてしまったかのように顔を伏せる。
こんな、やつれた姿を本当はユリウス様に見せたくない。
いつも毅然とした私でありたいのに、……そう思うと微かに心が暗くなる。
それでも、それでも……ユリウス様が私を必要として下さる限りは、
私は私で居られる。
雷神イシュタル。
そう呼んで皆が恐れるトールハンマーの使い手ではあったが
主君ユリウスに捧げる想いは真摯な物であった。
否、それは呪縛と言っても良い。
蜘蛛の糸に易々と絡めとられがんじがらめにされてしまった蝶、それでも
蜘蛛に恋焦がれてしまったかのように魅了され
自らの身を差し出し続ける……
蝶はイシュタルの今の姿その物である。

 

(明日が、待ち遠しいわ。)

頬はこけて、明らかに不調な様子を漂わせるイシュタルだったが
今はただ静かに休養して一刻も早くこの病床から復帰せねばとしっかりと

心に決める。
つやつやと滑らかで清潔なシーツの上で、枕に顔を
埋めてもう一眠りをするのであった。

 

 時は一日経ち、早くも夕刻が訪れた。
まだ少しばかり眩暈はする物の、立てぬ程では無い。
侍女2人に手伝ってもらいゆっくりと黒のドレスに身を包み、
新調させた靴に足を通すと、
鏡に映った己の姿を見る。
白粉と頬紅で誤魔化してある物のやや、頬はそげている。
だがそれでも意思のあるはっきりとした紫の瞳は、やつれを感じさせぬ程
力強く輝きそして凛とした空気を纏わせていた。

約束の時間のきっかり20分前に、全ての準備を済ませると、
廊下に出て床に敷かれている紅き絨毯の上を歩いて行く。
じりり、と足に痺れが走る……だがその痛みすらも
これから愛する人に会えると言う
喜びの前には霞むと言う物だ。


「ユリウス様、失礼いたします。」

 

Part5へ続く