徒然の都

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ファイアーエムブレム聖戦の系譜・二次創作小説『呪縛』Part5

ファイアーエムブレム聖戦の系譜/SS
『呪縛』Part5

 

軽く2度ノックした後に、中から入れと言う声が
聞けたならば胸を精一杯堂々と張り
ユリウスの広き私室の中に招き入れられる。
入って直ぐ正面には会議用の長机が。
それには、今は真っ白の
テーブルクロスが広げられその上に豪勢に並ぶ食事の数々だ。
しかしその食事の内容へと目を遣った瞬間イシュタルは、
思わず固まってしまうのだ。
ユリウスが、目の前に用意させた物。それは……


(えっ……?)


明らかに子供の手と思わしき、物体が皿の上に盛り付けられている。
その肉には火が入っており、野菜も一緒に並べられていた!
イシュタルは、その物体を認識した瞬間込み上げて
来る吐き気に一瞬だけ背中を丸くした。

 

それは、……人肉だった。
有り得ない物を見てしまったイシュタルはそれでも、

よろけながらユリウスの近くの席へと倒れ込む。
それを面白そうににやにやと眺めながら、ユリウスは告げるのであった。


「今日のは特別メニューだ。これを食えばお前もさぞかし……
力がみなぎるだろう。
くくっ、これは最高の食材だ。」


そう言いナイフとフォークを使わずに、右手で腕の
部位の肉を手に取るとソースをしたたらせつつ
それを食うのである。
イシュタルは、彼がその肉を食うのを見るのは
初めてであったが驚きを通り越して
脱力してしまった。暫しの逡巡の後、


「私は、……私は食べられません。ごめんなさい、
ユリウス様。まだ胃が食事を受け付けないのです。」

 

それは半分は本当の事である。
人肉を食べる、しかも子供狩りで集めたであろう
幼い子供の肉だ。食べられる筈も無い。
俯いて、暗い表情を見せるイシュタルに対し
ユリウスはそれを気にする事無く食事を続ける。
食らい、咀嚼し、そしてまた別の料理にも手を伸ばす……
その様は人間離れした物であったか。


(ユリウス様、どうされてしまったの?
そんな事を平然と行う方では無い……、それなのに。)


(子供狩り、それだけは許してはならないのだと……)


イシュタルの胸に正常な判断が差し込む。
子供を救う。かつユリウスに忠誠を捧げる。
その両立は難しい物であるだろうが、この時芽生えた
微かな違和感は、後にイシュタルをある行動へと導くのである。


巷では、ユリウスは暗黒神ロプトウスの
化身だと揶揄されている。
人ならざる者、人を超えた者、そして『人を食らう者』……

椅子にもたれかかるようにしてイシュタルは、気づかぬ内に体を弛緩させて軽く気絶していた。
その後は、あまり記憶が鮮明では無い。
気がつけば、食事の席はきれいに片付けられており
イシュタルはソファの上に横たえられていた。


「ユリウス様……。」


変わらぬ姿が目の前にある、それを見ては安堵の息を零し
ゆっくりと足を絨毯の上へと置き
起き上がろうとした。
と、ふいにユリウスが手を伸ばしイシュタルを軽々と
横抱きにして抱え上げる!
イシュタルは彼の首に抱きつくようにして
手を伸ばすと微かに目を閉じた。
ああ、今日も。今日もまた……捕らえられる。
捕らわれてしまう。溺れてしまう。
それは、呪縛と言う名の枷である。

椅子にもたれかかるようにしてイシュタルは、気づかぬ内に体を弛緩させて軽く気絶していた。
その後は、あまり記憶が鮮明では無い。
気がつけば、食事の席はきれいに片付けられており
イシュタルはソファの上に横たえられていた。


「ユリウス様……。」


変わらぬ姿が目の前にある、それを見ては安堵の息を零し
ゆっくりと足を絨毯の上へと置き
起き上がろうとした。
と、ふいにユリウスが手を伸ばしイシュタルを軽々と
横抱きにして抱え上げる!
イシュタルは彼の首に抱きつくようにして
手を伸ばすと微かに目を閉じた。
ああ、今日も。今日もまた……捕らえられる。
捕らわれてしまう。溺れてしまう。
それは、呪縛と言う名の枷である。

 

赤き瞳と、紫の瞳が交差するとユリウスはにやり、と不敵な笑みを浮かべ
そのまま寝室の方へと歩んでいくだろう。
寝室の扉が、魔力でぎぃ……く

開けられるとその奥には
きちんと整えられたベッドがあった。
ユリウスが、1歩1歩歩んで行く度にイシュタルの心はざわざわと揺れる。
2人の間に最早言葉は無く、ありのまま、触れ合うのみだ。

静かに、静かに寝室の扉が閉まっていく。

捕らえられてしまった少女は、夜が明けるまで離される事は無いだろう。

 


<終わり>