徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ベルウィックサーガ・4週目攻略メモ その24

~~~~ベルウィックサーガ~~~~

 

第8章依頼「老兵は…」 22ターンクリア

 

 

 

出撃要員:エルバート・アーサー・ダウド・セネ・クリス・

シルウィス・レオン・アデル・ラレンティア・イゼルナ

 

 

 

【メモ】

帝国兵が北から迫って来るので村人を逃がしつつ

応戦。

フンカーを18ターン目に捕縛。

ラーソンを20ターン目に捕縛。

 

 

 

 

【オマケ・ミニ小説~8章依頼】

 

 

 

夜も随分更けた頃、エルバートはナルヴィアの自室で一人

酒を飲んでいた。

弔い酒である。

酒の銘柄は「水龍の涙」と呼ばれる珍しい酒だ。

季節は秋から移り変わり冬に突入しようとしていた。

水龍の涙は一口飲むと体の温度が急激にさがり、

冷え冷えとした感触をもたらしてくれる。

度数もそこそこある為に、すぐに酔いが回る。

 

「ご老人方…見事な最期だった。」

 

ため息とともにそんな言葉が口から漏れる。

 

 

 

ダトレイ、チェピシフ、ギブス、ウェーバー。

4人の老人達はハイムの村で果敢に戦った。

帝国の大軍が押し寄せて来て居る事を知って尚

逃げ遅れた村人達を

逃すためにバリスタを用いて

援護射撃を行ってくれたのだ。

そして最期まで村に残り村と共に

散っていった。

その死を悼む気持ちよりも、

男としての生き様に憧れてしまう気持ちの方が強いのは

エルバートが軍人として任務についている時間が

長いせいだろうか。

エルバートは一人苦笑しながら

酒を一口口に含むと、先ほどクリスの私室に行ったときの

会話を思い出していた。

 

 

 

エルバートが、密かに想いを寄せる女騎士クリスの部屋にて。

今夜のクリスは泣いていた。

原因は、老人達が何も言わずに散っていったことだろう。

 

「見事な老人達だった…。男子は幾つになっても

あのようにありたいものだな。」

 

エルバートが心底感心したようにそう呟くと、クリスは

キッとそちらを睨みつける。

 

「忠誠だ、男気だと…勝手に騒いで、勝手に死んで…。

私には理解できません。」

「無駄死にじゃない、彼らは成すべき事をして死んだ。」

 

静かに告げるエルバートの言葉にますます眉尻を釣り上げて

クリスは口を開く。怒りの矛先をぶつける相手は

エルバートでは無い、という事は十二分に分かっていた事だけれども。

 

 

「貴方達は何時も、そう。残された者の気持ちなんて少しも

省みない!」

 

 

その言葉は辛辣にエルバートの胸に突き刺さった。

 

 

 

(残された者…か。)

 

 

酒の入った瓶を傾けグラスに注ぐと酔って赤くなった眼で

クリスの言葉をもう一度思い出す。

エルバートとて、「残された者」には間違いない。

今回の老人にしろ、かつての戦友達、部下達にしろ

エルバートよりも先に逝った者は多い。

だがクリスは女、エルバートは男。

その捉え方に相違があっても仕方がない。

前者は受動的、後者は能動的と人間の性(サガ)として

決まっているのだから。

勿論エルバートとても、悲しいという気持ちはある。

だが不思議と涙は出てこなかった。

クリスのように素直に感情を表に出すことなく、

ただ、一人でしみじみと酒を飲み弔いの意を示すだけだ。

それが正しい事かどうかは分からないが

少なくともエルバートは悲しみの気持ちを昇華させる為には

必要な事だと思った。

 

 

 

その頃、クリスは一人私室を抜け出して

夜の墓地へとやってきていた。

せめて、その遺骸はなくとも老人達の墓を形だけでも

作りたくて。

懸命に地面を手で掘って、土の塊を積み上げ

墓らしい形にする。

そして辺りに咲いていた野花を摘んでは

土を盛って作られた墓を綺麗に飾る。

暫くそうやって、老人一人一人の思い出を胸に

静かに、静かに深く頭を垂れて祈りを捧げる。

 

 

「鼻垂れフォルマー」という呼び名で

フォルマー隊長を呼んで笑った恐れを知らぬダトレイ。

賭け事が好きらしく、昔ポーカーで

勝った話を自慢そうにしてくれた

チェピシフ。

朗らかな笑い声が今でも耳の奥に残る

威勢の良い男、ギブス。

そして、クリスの尻を触って「安産型じゃな!」と

のたまったウェーバー。

 

 

一人一人の顔が浮かぶ。

またぽろりと涙が浮かんだ。

ふと、背後に人の気配がし一人の人物が

こちらへやってくるのが

分かった。

 

泣き顔を見られまいと急いで眼を軽くこすりながら

そちらの方に振り向くと、エルバートが

来ていた。

 

「エルバート、また貴方なのですか…?」

 

「ああ、クリスの様子が心配でな。部屋に行ったら留守だったし

何処へ行ったのかと…。」

「私が何処へ行こうが勝手です!」

 

 

ぷい、と顔を背けるとそのまま歩き出そうとする。

 

 

「墓を作っていたのか…。クリスらしいな。」

 

 

目ざとくクリスの足元にある小さな形ばかりの墓を覗き込み

そこに添えられた可憐な草花を確認する。

いかにも女性の手で作られた、と窺い知る事ができる

その墓を見てエルバートは少し笑んで見せた。

ぴたり、クリスの足が止まる。

 

 

「君の優しい気持ちは、きっとご老人方にも届いているはずだ。

彼らは幸せ者だ。」

「…そうでしょうか?」

「ああ、君や皆の思い出の中に彼らはずっと生き続ける。

思い出の中の老人方は常に笑顔だ。」

 

「思い出の中に…そうね。私達は忘れない。いつかこの戦争が

終わっても…ずっと。」

「さあ、夜風は体に毒だ。部屋まで送っていこう。」

 

エルバートは、そう言うと、クリスの隣に立ち

もう一度墓の方を見やった。

 

 

 

「フォフォフォ、わしらはお前さんの恋を応援しとるぞ!」

「恋愛は駆け引き、賭け事と同じじゃ!」

「天国で待っているからの。またクリスの尻を触らせておくれ。」

「鼻垂れフォルマーにもよろしくな!」

 

 

4人の老人の声が鮮明に思い出される。

 

そして気のせいか、そんな声が響いてくるような

錯覚に襲われた。

エルバートは軽く頭を振ると、クリスを

部屋へと送っていくのだった。

 

 

 

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