徒然の都

ベルウィックサーガ、ファイアーエムブレム聖戦の系譜&if、過去のSS置き場。

ベルウィックサーガ・4週目攻略メモ その36

11章依頼「流刑の島」19ターンクリア
 
出撃要員:イゼルナ・イストバル・セネ・
シルウィス・ファラミア・
エニード・エルバート・リース・ウォード
 
【メモ】
2ターン目 モロ捕縛
13ターン目 ライール撃破
18ターン目 バドリアス撃破
 
【備考】
依頼後、ロードグラムとペルシーダ修理
(賞金首完全制覇達成ボーナス)
 
レオンクラスチェンジ
 
 
【オマケミニ小説~11章依頼】
 
ディアンの今までの戦い方は壮絶、の一言だった。
人は、守るべき者を失ったとき、心の
タガが外れると言う。
渾身の力で帝国兵の頭上に斧を振るい、
戦意を失って逃げ出そうとする者、
怯えて命乞いをする者にも容赦無く全力で止めを刺す、
それがディアンのやり方だった。
全ては帝国兵への復讐のため。
数年前にディアンの住んでいた村は帝国兵の襲撃に遭い、
全滅したのだ。
ディアンの母や妹達も口では言い表せない
程酷いやり口で殺された。
その日からディアンは鬼となった。
 
今日も戦場で斧を振るうディアンの全身は返り血を浴びていた。
休む間もなく、既に肉塊となった帝国兵に何度も斧を打ち付ける。
それを後ろで見ていたウォードは顔をしかめていたが
黙っており何も言わなかった。
内心は、
 
(なんと野蛮な者だ…まるで
自分の身を守るという事を
念頭に置いていないではないか。
およそ明日を生きると言う者の戦い方では無い。)
 
と思っていたが。
 
戦場の中、そんなディアンにたたっと駆け寄る者が居た。
聖なる魔導球を手に持ったローブ姿のシスター、イゼルナである。
周囲の者が敵味方問わず恐れて近づこうともしないその男に、
優しく声を掛けて魔導球を掲げては、傷を癒していく。
 
「シスター。俺の事はいい。他の者の所に行ってやれ。」
 
そんなイゼルナの行動に礼を述べる事もしないディアンだが
その険しい表情は幾分か緩んでいた。
 
「でも、貴方の傷が一番酷いです…。」
 
イゼルナの瞳がディアンの方を悲しく見つめて、
しかしそっと無言で後方へ下がっていった。
次なる敵を求めてディアンの双眸に炎が宿る。
復讐。
その原動力がある限り、敵を求め
彼らを血祭りに上げていく。
しかしある日を境にディアンの生き方は劇的に変わって行く。
 
 
それは今より数ヶ月前の出来事。
戦場で倒れていたフラウスと言う男を
シノン騎士団は捕虜として拿捕した。
その男はナルヴィアの修道院で手厚い看護を受けて
漸く、歩ける迄に回復していた。
笑顔を見せるフラウスの前で微笑みを返しながら
対話をしているのはイゼルナだ。
 
「有難う、貴女の様な方が同盟軍に居たとは…
私の傷が治ったのは全てシスターのおかげです。」
「その言葉を聞いて嬉しく思います。
戦場で、傷つき苦しんでいる人に同盟も帝国もありません。
次回の捕虜交換で帰国されるそうですね。国に戻ってもご無事で。」
「本当に有難う…シスターのような方に出会えて本当に良かった。」
 
そして教会の外へ出て歩き出すフラウス。
うららかな昼下がり。
その光景は平和その物に見えた。
しかしその平和は突然の来訪者によって破られる。
 
 
「その男は…帝国兵か!」
 
怒声と共に一人の男が近づいてくる。
その瞳は怒りを含んで真っ赤に染まっていた。
 
「駄目です…待ってください。ディアン。」
 
イゼルナは慌てて斧を抜いたディアンに駆け寄った。
ディアンは今にもフラウス目掛けて斧を振り下ろそうと
していた。
フラウスを庇う様な位置で立ちはだかるイゼルナに
苛立ちをぶつけるかのように言葉を投げかける。
 
「シスター、どいてくれ。そいつは俺が倒す!」
 
フラウスは、額に冷や汗を浮かべながら
 
「くっ…。」
 
と観念したかのように息を吐く。
 
「ディアン…!」
 
シスターイゼルナの瞳を見てディアンはぎょっとして
身を引いて斧を下げる。
イゼルナの瞳は悲しみの涙で濡れていた。
 
「何故…君が泣く?」
 
その言葉に関してはフラウスも同じ気持ちのようで
困惑したかのようにイゼルナの顔を見つめている。
 
「お2人ともこちらへ来て、話を聞いてください…。」
 
ディアンはその言葉に渋々と言った様子で、頷くと
尚も、帝国の男に恨みと怒りの目を向けながらイゼルナに
手を引かれて
歩いていく。
もう片方の手でフラウスの手を握る
イゼルナは、場所を移して
とある墓地の立つ静かな場所へと赴いた。
 
 
そこでディアンは聞かされた。
フラウスが戦場に立つまでの経緯を。
それは己と寸分違わない、恐ろしいまでの
境遇の一致だった。
穏やかな男が、戦いの鬼へと
変貌するに十分な理由…
「家族の復讐」という現実を
目の前にディアンの心にガンと亀裂が走った。
フラウスは静かに語りかけた。
 
「私の心は、長い間憎しみで覆われていた。
シスターイゼルナに救われるまでは。
同盟軍を殺す事を生きがいにしていた私は
やっとその時に気がついたのだ。
本当に憎むべきなのは兵士ではない。
戦争その物なのだと。」
「……。」
 
それから、イゼルナとの暫くの話し合いの後
ディアンは黙って考え込んだ。
 
(俺は一体…何をしてきた?)
 
と。
少なくとも、明日を勝ち取る為の戦いではなかった。
過去の憎しみをひたすら、帝国の兵士へと向けて
居ただけだ。
そこには何も無い。
あるのは、血と怨嗟の声。
己の心にヒビが入り壊れかける音。
それが過去の自分には分かっていたはずだ。
今はもうその音と声は己の中で薄れてしまって
表には出てこない。…こないはずだった。
 
だが、今。
イゼルナの言葉は、心に降り積もった解けぬ雪を
溶かす湯水のように確かにディアンの心に届いた。
 
「少し、考えさせてくれ。」
 
そう告げる。
フラウスは、ほっとしたように肩を下ろすと
ディアンの方へひと振りの斧を差し出す。
 
「ディアンとか言ったな。よければこの斧を使ってくれ。
私の愛用して来たプージと言う斧だ。」
「…いいのか?」
「ああ、これをどう使うかはこれからの君次第だ。
この斧を託す。」
 
大きな柄と刃を持つその斧はしっくりと手に馴染む。
『君次第』と言われて少し考え込んだディアンは
表情を変える事無く話す。
 
「分かった。この斧は俺が使わせてもらう。」
 
そしてその夜、ディアンはリース公子とウォードの居る
執務室へと一人赴いた。
改めてシノン騎士団の一員として加えて貰う為に。
ディアンはリースの暖かい言葉に
改めて決意を新たにする。
 
(俺は…誓う。もうシスターイゼルナを悲しませたりはしない。
お袋、妹よ…見ていてくれ。)
 
 
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